(2016年2月6日更新 2019年4月版はこちら)
1. 現況
(1)GDP(国内総生産)
2014年のイタリアのGDPは、21,412億ドルで、世界第8位の規模。EU内では独、英、仏に次ぐ4位(世銀)。
ユーロベースでの欧州主要国名目GDPの推移は下の図の通り(欧州委員会、2015年以降は見通し)。ユーロに移行する前の数値は、欧州の決済通貨単位ECUをベースにしているため、1990年代のイタリアのGDPは為替の影響を受け蛇行している。ユーロ導入後は、独自通貨のイギリスだけが為替相場の影響を受け、大きく蛇行している。
東西ドイツ統一後のドイツの経済規模は、ヨーロッパでは頭一つ抜けた存在。イタリアは1990年代初頭までは欧州2位を伺う勢いだったものの、その後、リラの下落によりフランスとの差が広がり、英経済の順調な伸張もあり、1997年以降は、一貫して欧州4位に甘んじている。
(2)一人あたりGDP
2014年のイタリアの国民一人あたりのGDPは34908.5ドル(世銀)。下の図は欧州五大国に日米を加えたもの。イタリアの一人あたりGDPは、2000年代前半に独仏のレベルに接近したが、リーマンショック以降は逆に差が広がり、2014年には英仏独に5000ドル以上の差を付けられている。
2000年代後半に、イタリアの一人あたりGDP(または国民所得)がスペインに抜かれるのではないかという心配が伊国内で広まった。しかし、実際にスペインに抜かれそうだったのは日本だったようだ。日本は2007年と2008年にイタリアを下回ったものの、2009年以降は再度上回っている。
(2)実質経済成長率
2014年の実質経済成長率は-0.4%。3年連続のマイナス成長。
(3)物価動向
2015年の物価上昇率は0.1%。2004年以降で最も低かった。
(4)失業率
2014年の失業率は12.7%。イタリアの雇用情勢は決してよいとは言えないが、ユーロ圏平均と較べ著しく悪いわけではない。欧州主要国の中では、スペインの雇用が近年極端に悪化している。
2002年から2008年まではドイツよりも低いレベルだった。経済成長率と同様、2008年から2009年にかけて経済情勢が急速に悪化した後の回復局面以降で、他の主要国と差がついている。
(5)貿易額
輸出: 528,368.4百万ドル 輸入: 471,659.5百万ドル (2014年:国連統計)
(6)貿易依存度
イタリアの貿易依存度は日本とドイツのちょうど中間に位置する。
2. 戦後経済の主な流れ
1958年から1963年にかけて高度成長。「経済の奇跡」と呼ばれる。
1960年代後半から大規模な労働争議が続く。
1970年、労働者の権利を大幅に強化する労働者憲章法が成立。
1975年、戦後はじめてのマイナス成長を記録。
1980年代前半、イギリスを抜き世界第5位の経済規模となる(すぐに抜き返される)。
1990年代、通貨統合へ参加するため、大規模な財政健全化策を継続して実施。
2000年代、ユーロ圏平均を下回る低成長が続く。
2007年、米でサブプライムローン問題が発生するも、イタリアへの影響は限定的。
2010年、欧州ソブリン危機発生後、世界から財政の成り行きを不安視される。
2012年から2014年まで3年連続のマイナス成長が続く。
3. 為替と金融
戦後イタリアは、「安いリラ」で輸出攻勢をかけ経済成長を達成してきた。一方で、不安定な貨幣価値と高インフレに悩まされた。そのため、通貨を安定させ、インフレを抑えるための政策がしばしば実施された。かつての中央銀行はイタリア銀行(Banca d’Italia)。現在は、欧州中央銀行に権限委譲。
1973年3月、「欧州通貨のヘビ」導入。
1979年3月、欧州通貨制度(EMS)が発足。
1981年、イタリア中銀による国債の直接引受を停止。
1998年5月、イタリアのユーロ参加が決まる。
2002年1月、ユーロ紙幣及び硬貨の流通はじまる。
統計参考サイト
http://ec.europa.eu/eurostat
http://data.worldbank.org/indicator
http://comtrade.un.org/pb/CountryPagesNew.aspx?y=2014