イタリアの政治 基本まとめ(2024年4月更新)

(2024年4月7日更新)

1.大統領

現在の大統領はセルジョ・マッタレッラ(Sergio Mattarella)。
大統領経験者はマッタレッラ氏を入れて計12人。

イタリアは議会制の共和国(Repubblica parlamentare)。
かつては王政だったが、1946年6月に行われた国民投票により共和制が選択された。

大統領は議会での無記名投票により選ばれる。任期は7年(憲85)。2015年から現職のマッタレッラ氏は現在2期目。大統領には、市民的および政治的権利を有する50歳以上の全ての市民から選ばれる(憲84)。

2022年の大統領選は、下院議員630名および上院議員321名(うちに終身議員6名)に州代表58名を加えた合計1009名による投票で行われた。3回目までの投票では3分の2を超える票、4回目からは過半数の票を得た者が当選する。決まるまで投票を繰り返す。

1009 × 2/3 = 672.666…
1009 ÷ 2 = 504.5

3回目までは673票、4回目からは505票が必要(1)。マッタレッラ大統領は2022年1月実施の選挙において、8回目の投票で759票を得て再選された(2)。前回選挙では4回目の投票で過半数を得てすんなりと選ばれたのに対し今回は8回を要した。

3回目までの投票結果を見ると大多数が白票。1回目投票では一部の少数派が推すパオロ・マッダレーナ氏が最多票を集めたもののも(3)、4回目以降の投票に彼の名前はない。

(1)https://www.ilsole24ore.com
(2)https://parlamento18.camera.it

(3)https://www.corriere.it

※上院議員について
2020年の憲法改正(4)で、大統領の任命による終身上院議員の数は5名を超えることができないと明確に規定された(憲59後段)。それまでは1人の大統領が任命できる人数が5人までなのか、全体の合計が5人までなのか不明確だった(5)。

今回の大統領選挙にはナポリターノ前大統領も終身上院議員として投票権を有していた。大統領経験者は本人が辞退しない限り終身上院議員となる(憲59前段)。したがって、投票権を有した終身上院議員は合計6名だった。

ナポリターノ前大統領死去(2023年9月)により現在の終身上院議員は5名。

(4)https://www.gazzettaufficiale.it
(5)https://www.openpolis.it

2.内閣

大統領は首相および首相の提案に基づき国務大臣を任命する(憲92)。

組閣の手続きは以下の段階に分かれている(6)。
・準備段階(la fase preparatoria
– 大統領と政党代表者らとの面談(consultazioni)など
・委任(l’incarico
– 大統領が一人の人物に組閣を委任する
・任命(la nomina
– 大統領による新首相任命
– 大統領による国務大臣任命
– 前首相の辞任受諾
・宣誓と信任(il giuramento e la fiducia
– 法律に従った宣誓を行う
– 任命から10日以内に両議会から信任を受ける
(6)https://www.governo.it

現内閣は、2022年10月に発足したメローニ内閣。⇒ 閣僚名簿(伊語)

10月22日の下院信任投票(賛成235、反対154、棄権5)、10月26日の上院信任投票(賛成115、反対79、棄権5)により議会の信任を得た(7)。
(7)https://www.camera.it

3.首相

現首相はジョルジャ・メローニ (Giorgia Meloni)氏。

【メローニ氏のおもな経歴】(8)
・1977年1月15日ローマ生まれ
・29歳で下院初当選
・2008年、31歳で初入閣(Ministro della Gioventù)
・2012年、政党「イタリアの同胞(Fratelli d’Italia)」を立ち上げ党首に。
・2022年10月- イタリア首相
(8)https://www.governo.it

4.議会

上院・下院の二院制。任期は両院とも5年
両院の権限は完全に平等(bicameralismo perfetto)。
大統領は議会を解散できる。二つのうち一つだけでも可(憲88)。

(1)上院

2020年の憲法改正により、選挙で選ばれる上院議員定数が315から200に削減された。また、2021年には選挙権年齢を満25歳以上とする規定が憲法58条から削除され、選挙権年齢は満18歳以上に引き下げられた(9)。被選挙権は満40歳以上で変わらない(憲58)。
(9)https://www.normattiva.it

2022年9月、議員定数削減後の初の国政選挙が行われた。なお、日本の参議院と異なりイタリアの上院には解散制度があり(憲88)、上下院の同時選挙が通例となっている。

主な院内会派と構成人数:


出典: www.senato.it

(2)下院

2020年の憲法改正により、下院議員定数が630から400に削減された(10)。
選挙権は満18歳以上、被選挙権は満25歳以上(憲56)。
(10)https://www.gazzettaufficiale.it

2022年9月、議員定数削減後の初の国政選挙が行われた。

主な院内会派と構成人数:

出典: www.camera.it
政党名の和訳は外務省HPを参照されたし。

5.近年の動き

2013年2月、総選挙(両院同時)で民主党勝利。4月、左右大連立のレッタ政権が発足。
2013年11月、連立与党「自由人民」が分裂し、一部は野党に。
2014年2月、レッタ内閣が総辞職し、レンツィ政権が発足。
2014年5月、欧州議会選挙で与党民主党が圧勝。
2016年12月、国民投票で敗北したレンツィ内閣が総辞職。ジェンティローニ政権が発足。
2017年5月、G7タオルミーナ・サミット(外務省HP)。
2018年3月、総選挙(両院同時)で五つ星運動と中道右派連合が勝利。6月、五つ星運動と同盟の連立によるコンテ政権が発足。
2019年8月、同盟が連立政権離脱表明。
2019年9月、民主党などが政権に加わって第二次コンテ政権が発足。
2019年9月、民主党から離脱したレンツィ元首相が新党(イタリア・ヴィーヴァ)立ち上げ。
2021年1月、イタリア・ヴィーヴァが政権離脱表明。
2021年1月、第二次コンテ政権が総辞職。
2021年2月、ドラギ政権が発足。
2022年10月、メローニ政権が発足。
政権交代の顛末は外務省HPジェトロHPなどに書いてある。

バックナンバー:
イタリアの政治 基本まとめ 2021年11月版
イタリアの政治 基本まとめ 2018年7月版

 

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