日本からイタリアに引っ越したとき、最初に戸惑うことのひとつが電気の差込プラグ(電気製品のコードの先端についている器具, spina elettrica)とコンセント(壁についているプラグ受け, presa di corrente)の形状の違いではないでしょうか。しかも、日本と違って家庭でも数種類のプラグが並行して使われています。
日本とは電圧も異なるため、差し込んで本当に大丈夫なのかという不安が常にあります。実際、日本からもってきた電気製品をイタリアで簡単に壊してしてしまう、ということがよくあります。こうした電気にまつわるトラブルを未然に防ぐための基礎知識を簡単にまとめました。
イタリアの定格電圧
イタリアの家庭用電源の電圧は230Vです (Norma CEI 8-6)。日本は100Vなので、100Vのみに対応している日本国内限定仕様の電気製品を形状変換プラグで単純につないだら一発で壊れます。また、日本の電気店で販売している比較的安価な電圧変換器具を使っても故障してしまうことがあるので、過信は禁物です。多少割高になっても日本からもってくる電気製品(例:炊飯器)は海外仕様品に限り、あとは現地調達するのが無難です。
コンセントと電気製品の間に外付けのACアダプターがある場合、そのACアダプターが230Vに対応していれば、プラグの形状を変換するだけで問題なくイタリアでも使用できます。例えば、下の左の写真のアダプターにはInput: AC 100V-240Vと書いてあるのでイタリアでも使えると判断できます。一方、右のアダプターにはI/P: 100-120Vと表記されており、そのままではイタリアで使えないことがわかります。
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電圧が許容範囲に含まれていることが確認できたら、変圧器を使用することなく変換プラグを使って直接接続できます。使用するのは、日本のA型プラグからイタリアで使用できるC型への変換プラグです(写真下左)。また、ACアダプターとコンセントをつなぐ電源コードそのものをC型に変えてしまう方法もあります(写真下右)。
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イタリア独自のプラグは2種類
イタリアには欧州共通のC型とは異なる独自規格の差込プラグ(L型プラグ)もあります。さらに、そのL型プラグには大小二種類あります。ここでは便宜的に大きい方を「16A」型、小さい方を「10A」型と呼びます。左下の写真の左のコンセントが「16A」型プラグ用コンセント、右が「10A」型プラグ用コンセントです。C型プラグは「10A」型プラグ用のコンセントに問題なく差し込むことができます。右下の写真は「16A」型と「10A」型の両方のプラグが差し込めるハイブリット型のコンセントです。
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形状はそっくりでも大きさの違う二種類のプラグ
「16A」型プラグと「10A」型プラグの形状は、下の写真のようによく似ているため注意が必要です。写真右の接続端子が太くずんぐりしているほうが「16A」型プラグ、写真左の接続端子が細長い方が「10A」型プラグです。
この二つのタイプのプラグにはさきほどのC型プラグと違って真ん中にもう一本、電気機器を保護するための「アース(terra)」がついています。イタリアの法令により差込接続機器にはアースを設置することが義務づけられているため、イタリアの家屋の壁についているコンセントや、電気店などで販売されている延長コードなどには必ずこのアースがついたタイプが採用されています。
「16A」型プラグは16アンペア、「10A」型プラグは10アンペアを定格電流としています。したがって、消費電力の大きい電気製品を使う場合や、より多くの電気製品を接続したい場合は、サイズの大きい「16A」型プラグの方がより適しているといえます。
参考:配線器具と電材の知識
参考:アンペア(A)・ボルト(V)・ワット(W)のそれぞれの違いについて教えて下さい。
大は小を兼ねますが、小は大を兼ねることができません。「16A」型プラグが付いた延長コードやマルチタップ(電源を分岐させる装置)には「10A」型も差し込めるハイブリット型のコンセントが付いていますが、もとのプラグが「10A」型プラグのものには、基本的に「10A」型プラグか後述のシュコ型プラグしか差し込めないようになっています(下の写真のような安全回路を搭載したものを除く)。
なお、アースのないC型プラグの定格電流は2.5Aとかなり低く制限されています。イタリアではC型プラグをつけた電気製品が多く販売されていますが、消費電力が比較的低いものに限られています。
ドイツ生まれのシュコ型プラグ
ドイツ独自の規格に由来するシュコ型プラグ(spina Schuko)も、イタリアでよく見る電気プラグです(写真下)。シュコ型プラグの定格電流は16Aで、独自の形状のアース端子を備えています。安全性が高く、消費電力が大きい電気製品にも安心して使用することができます。実際、イタリアで販売されている洗濯機、電子レンジなど消費電力の大きい電気製品には、ほぼ例外なくこのシュコ型プラグが採用されています。
シュコ型プラグはシュコ型コンセント(presa Schuko)にしか差し込めないので、壁のコンセントにシュコ型がなければ、変換アダプターかシュコ型コンセントの付いた延長コードの入手が必須になります(下の写真はシュコ型から「10A」型への変換アダプター)。
以上をまとめて表にすると以下のようになります。
【プラグ&コンセント相性早見表】
「16A」型
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「10A」型
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ハイブリット型
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シュコ型
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「16A」型
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「10A」型
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(注1)
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シュコ型
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(注2)
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(注2)
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C型
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(注1)「10A」型のアース端子用の穴が設けてあるコンセントに限り差し込める。
(注2)端子間の幅は同じでもサイズが合わないので無理に押し込まないよう注意。
USB機器の充電は?
スマートフォンなどのUSB機器の充電に関しては、あまり悩む必要がありません。電圧の問題がないUSB端子の付いたアダプターを使用すれば問題なく充電できます。
以上、イタリアの家庭用電源の差込接続器事情を簡単にまとめてみました。なお、電気のトラブルを未然に防ぐため、過電流保護装置 (Protezione sovraccarichi )や過電圧保護装置 (Protezione sovratensione)を備えた製品(例えば下のようなもの)が販売されています。延長コードやマルチタップを購入する際はどうぞチェックしてみてください。(了)