9日、イタリア国家統計局(ISTAT)が2017年11月の雇用統計を発表しました。
11月の失業率は前月より0.1%低い11.0%
11月の失業率は前月より0.1%低い11.0%でした(速報値)。2011年以降のデータでは、2014年11月の13.0%をピークに緩やかに下降しています。
出典: イタリア国家統計局
2008年8月を基準にした比較
2008年8月を基準(ゼロ)にした失業率の推移(%の差)は下の図ようになります。
出典: ISTAT月例サマリー
ユーロ圏(Euro-area)全体の推移を見ると、リーマンショック(2008年9月)後の世界経済危機、さらにその後の欧州におけるユーロ危機により大きく雇用が悪化した後、2012-13年をピークに徐々に改善していることがわかります。
しかしイタリア(Italia)の雇用改善の足取りは重く、ユーロ圏全体の流れに取り残されているようです。イタリアにおける雇用悪化のピークは2013年の最初の数ヶ月であり、2017年10月においても危機前の水準からほど遠い状況です(+4.3%)。
依然高い若者の失業率
15歳から24歳までの若年層失業率は前月より1.3%低い32.7%でした。2014年3月の43.6%に比べ10%以上改善しました。一時期に比べ低下したとはいえ、依然高いレベルにあります。
出典: イタリア国家統計局
この傾向は程度は異なるものの欧州の他の主要国でも見られます。2017年11月の主要国の若年層失業率を比較すると、比較的低い日本やドイツにくらべ、イタリアやスペインは深刻な数字です。
出典: http://ec.europa.eu/eurostat
ところで、イタリアの大学卒業時の平均年齢は26.1歳というデータがあります(2016年。短期課程(3年)、後期課程(2年)、一貫制課程(5年または6年)の卒業者の全体を平均)。そのため、大学新卒者の多くはイタリアの若年層(15-24歳)には含まれません。
情報源: https://www.bergamonews.it/
年齢別失業率を比較してみると、25-34歳も平均にくらべかなり高い水準にあることがわかります。
出典: イタリア国家統計局
マッキンゼーレポート
なぜこれほどまでにイタリアの若年層失業率は高いのでしょうか。マッキンゼーはイタリアの若年層の失業に関するレポートで、必ずしも昨今の経済危機が原因とは言い切れないとした上で、以下の3つの原因を挙げています。
出典: https://www.mckinsey.it
①企業側の需要と若者の選択とのギャップ
多くの産業分野で求人があるにもかかわらず、求人内容にふさわしい候補者が少ない。若者が学業の分野を選ぶ際に就職との関連性をしっかり認識していない。就職を意識して学部を選択している大学生は30%ほどにすぎない。
②就職先にふさわしい準備をしていない
イタリア企業の42%は初めて職に就く若者は、就職先にふさわしい準備をしていないと考えている。そして、そのうちの47%(欧州平均は33%、イギリスは18%)は、そのことが、就職後の仕事に悪影響を及ぼしていると考える。
イタリアの高校生および大学生のうち、就職前に職業研修(ステージまたはインターン)を受ける者は半数程度にすぎない。また、その期間も、1ヶ月以下のものが多い(高校生の受ける研修の50%、大学生の受ける研修の30%)。
③就職のための支援体制の問題
30歳以下の失業者の80%は友人、知人、家族を通じて職探しをおこなっており、公的サービスを通じて職探しを試みる者はその3分の1程度にすぎない(ドイツでは公的サービスの利用者が80%を超える)。
大卒の23%、高卒の43%が家族や友人を通じて職を見つけている。15歳から29歳までのイタリア人の若者で、公的サービスの紹介で就職した者はわずか1%に過ぎない。
こうした現状から以下の対策を提案しています。
・労働需要に対応した職業訓練の提供
・情報の伝播と透明化
・学校の職業科の見直し
・学校と企業の緊密な協力(学生の企業派遣と雇用主の学校派遣)
・若者の就職をサポートするサービス
これらの施策が若者の失業率改善に効果があるのか不明ですが、学生にとって望ましいことであるのは間違いないと思います。
(了)