かつては「世界最強リーグ」とうたわれたイタリアのサッカーリーグ・セリエA。日本人選手の活躍などもあり、日本ではいまだに人気の海外リーグのひとつといってよいだろう。そのセリエA、本当に「世界最強」だったことはあるのだろうか。また、あるとしたらいつ頃のことなのか。
欧州カップ戦での成績
表1は、1969/70年シーズン以降のイタリアのチームの欧州チャンピオンズ・リーグ(以下、CL)とヨーロッパ・リーグ(以下、EL)での成績である。現行制度では、CLは前年度の各リーグの優勝チームを含む上位チームが参加して欧州のクラブナンバーワンを決めるリーグであり、もうひとつのELは、CLに参加できなかった各国の前年度上位チームが参加して行われる(時代により名称・制度は変化している)。
(表1)イタリアのサッカークラブの欧州での成績
CL優勝 | CL準優勝 | EL優勝 | EL準優勝 | |
1969/70 – 1978/79 | 0 | 2 | 1 | 0 |
1979/80 – 1988/89 | 2 | 2 | 1 | 0 |
1989/90 – 1998/99 | 2 | 5 | 7 | 6 |
1999/2000 -2008/09 | 2 | 2 | 0 | 0 |
2009/10 – 2014/15 | 1 | 1 | 0 | 0 |
表1を見れば、一目瞭然、イタリアのサッカークラブが飛び抜けて好成績をあげ、我が世の春を謳歌したのは1990年代である(その前後と多少の繋がりがある)。CL優勝の2度はその前後10年と変わらないものの、準優勝が5度もある。10年間のCL決勝進出20チームのうち、イタリアのクラブが占める率は35%という高率である。ELのほうはさらにすさまじく、優勝が7度、準優勝が6度あり、イタリアのクラブ同士の決勝も4度ある。決勝進出20チームのうちイタリアのシェアは実に65%にのぼる。
ところが、21世紀になるとイタリアのクラブの勢いはパタリと止まる。1999/2000 – 2008/2009の10年では、CL優勝回数こそ二回と体面を保っているものの、ELのほうは1999年にパルマが優勝して以来、現在(2015年)に至るまでなんと決勝進出が1チームもない。
情報源:http://jp.uefa.com/memberassociations/uefarankings/country/index.html
欧州最優秀選手
世界最強リーグであるなら、世界最強の選手がいてしかるべきだろう。「バロンドール(金のボール)」と呼ばれる欧州全域(2007年からは世界)を対象とする最優秀選手賞の受賞者の数も見てみよう(制度の変更は度外視する)。表2が示すように、1980年代にはセリエAに所属する選手が7回も受賞している(シーズン中に移籍した選手も含む)。内訳はプラティニ(ユベントス)3回、ファン・バステン(ミラン)2回、フリット(ミラン)、ロッシ(ユベントス)が各1回である。
選手の顔ぶれだけ見れば、セリエAの隆盛はすでに80年代から始まっていたと言ってよいのかもしれない。マラドーナがナポリに加入したのは1984年。その後も、スター選手のセリエAへの移籍が続いた。90年代には6回、2000年代には3回受賞。そして、2010年以降は誰もバロンドールを獲得していない(2008年以降、受賞者はC・ロナウドとメッシの二人だけ)。
(表2)イタリアのサッカークラブ所属のバロンドール受賞者の数
1970 – 1979 | 0 |
1980 – 1989 | 7 |
1990 – 1999 | 6 |
2000 -2009 | 3 |
2010 – 2015 | 0 |
イタリアのサッカークラブの「競争力」
欧州サッカー連盟(UEFA)は、チャンピオンズ・リーグおよびヨーロッパ・リーグにおけるクラブ間の対戦成績をもとに国別ランキング(UEFAクラブ係数ランキング)を作成し、翌年のCLおよびELの出場枠決定に利用している。ランキング・ポイントは過去4シーズンの年間ポイントに現行シーズンに新たに獲得したポイントを加算して決められる。図1は2003年(2002/2003シーズン終了時点。以下同じ)以降の各年ポイント(5シーズン分の合計ポイント)の推移を表している。2003年にはランキング2位だったイタリアは、2010年に急上昇してきたドイツに並ばれ、翌2011年に4位に転落した。これにより、イタリア・セリエAからCL本大会に参加できるチーム数が4チームから3チームに減った(リーグ戦3位チームは夏場に行われるCLプレーオフに参加する)。まさにセリエA凋落を象徴した出来事といえる。2013年には5位のフランスとも接近したが、その後のフランスの失速により、5位転落は免れている。
(図1)UEFAリーグランキングポイント推移
UEFA公式サイトデータから作成。
最後に、セリエAの現状について。上記の国別ポイントの推移を見ればわかるように、イタリアのランキングポイントは2012年に底を打っている。そして、2014/2015シーズンには、CLで準優勝したユベントスの他、多くのチームが勝ち星をあげ、単年ではランキング上位のイングランド、ドイツを上回るポイントを獲得した。この好成績が続く保証はどこにもないし、さらに上にはスペインがいるものの、少なくとも復調の気配があると言うことはできるだろう。イタリアのサッカーファンが待ち望んでいるのは、言うまでもなく2009/2010シーズンのインテル以来のCL優勝だ。
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