ローマ市内のメジャーな美術品をできるだけ効率的に見て回るための散歩コース紹介の第3回。今回は、カンピドリオの丘からアルテンプス館までの約2kmの道のりをご紹介します。
ローマ美術散歩③ カンピドリオの丘からアルテンプス館まで
必要時間:全日
チェックポイント数:7カ所
移動距離:約2km
(大きな地図はこちらで)
A カピトリーノ美術館
(Musei Capitolini) (トリップアドバイザーの口コミを読む)
ローマの七つの丘のひとつ、カンピドリオの丘にある美術館。
ちなみにローマの7つの丘とは、
カンピドリオ 伊:Campidoglio 羅:Capitolinus
パラティーノ Palatino Palatinus
クイリナーレ Quirinale Quirinalis
ヴィミナーレ Viminale Viminalis
エスクイリーノ Esquilino Esquilinus
チェリオ Celio Caelius
アヴェンティーノ Aventino Aventinus
情報源:http://www.treccani.it/
古代のカンピドリオ:http://www.museicapitolini.org/
カピトリーノ美術館があるこの丘はイタリア語でカンピドリオと呼ばれていますが、美術館の名前はカピトリーノ。カンピドリオとカピトリーノが紛らわしいのでちょこっと調べてみたところ・・・
現代イタリア語で、カンピドリオ(Campidoglio)は名詞、カピトリーノ(Capitolino)は「カンピドリオの丘の」という意味の形容詞。カンピドリオはローマの七つの丘の一つで、そのラテン語名はカピトリヌスだとわかりました。
カンピドリオ(カピトリヌス)の丘には、かつて二つの森(Arx, Capitolium)があり、そのうちのひとつカピトリウム(Capitolium)が、今の丘の呼び名カンピドリオ(Campidoglio)の語源とのこと。変化のいきさつはわかりませんが、かなりなまりましたね。
一方、形容詞capitolinoは、ラテン語の形容詞(Capitolinus)からすんなりイタリア語になったので、名詞Campidoglioとの間に綴りのうえでちょっと距離ができたようです。
整理すると、
ラテン語 イタリア語
Capitolium (名詞) → Campidoglio カンピドリオ(カピトリヌス)の丘
Capitolinus (形容詞) → capitolino カンピドリオの丘の
したがって、日本語での丘の呼び名は、
○ カピトリヌスの丘
○ カンピドリオの丘
× カピトリーノの丘
さっきまでタイトルに「カピトリーノの丘」と入れていました(汗)
ところで、この美術館は、日本語ではカピトリーノ美術館ともカピトリーニ美術館とも呼ばれているようです。美術館の正式名称はムゼイ・カピトリーニ(Musei Capitolini)です。
カピトリーノは単数形、カピトリーニは複数形。美術館の正式名称が複数なのは、あとから設置された絵画館(Pinacoteca)がもとは別の施設だったため、二つを併せて呼ぶときに複数で呼んだことの名残なのだそうです。
そういえば、パンにハムや野菜を挟んだものを、日本では「パニーニ」と呼ぶことが多いようですが、これは複数形。一個なら単数の「パニーノ」じゃないと本当はおかしいということなります。
さて、このカピトリーノ美術館、下の図のようにとても規模の大きな施設です。
上の図の赤い矢印が入り口になります。
1-5のPalazzo dei Conservatoriの展示作品は、質・量ともに圧倒的です。一回りしたら、6のPalazzo Nuovoへ地下道を通って移動します。こちらも彫刻を中心に名作ぞろいで、のんびりしているとここで一日が終わってしまいます。
主要作品は、公式HPに”masterpieces“としてすでにピックアップされていますので、そちらをご参照ください。それ以外の興味を引く作品をあげます。
(1)オプス・セクティレのモザイク画
マッシモ館のものと同じく、もとユニウス・バッススの館にあったものです。
参考(Opus sectile):
http://www.treccani.it/enciclopedia/opus-sectile
http://archeoroma.beniculturali.it/node/186
(2)カラバッジョ「幸運(La Buona Ventura)」
そういえば、A.C.ミランにボナベントゥーラって名前の選手がいますね。
(3)カラカラ帝像
カラカラ帝の精悍な面構えは、まさに皇帝にふさわしいものかと。
B ドーリア・パンフィーリ美術館
(公式HP ) (トリップアドバイザーの口コミを読む)
カピトリーノ美術館を出て、階段を下り、ヴェネツィア広場からコルソ通りに入り、通りの向かって左側の歩道を少し歩くとドーリア・パンフィーリ美術館があります。ここのコレクションも圧倒的で、普通ならカピトリーノとここでおなかいっぱいになるはずです。
唯一の方策は、目当ての作品以外は見ないで出ることです。
(1)ティツィアーノ「バッティスタの首を持ったサロメ」
(2)カラバッジョ「エジプトへ逃げる途中の休息」
まだ時間があるようなら、アルテンプス館を目指します。
ルートにそって、
C サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会(ミケランジェロあり)
D パンテオン(ラファエロの墓あり)
E サン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会(カラバッジョあり)
F ナヴォーナ広場(ベルニーニあり)
を通過し、アルテンプス館へ。
G アルテンプス館
アルテンプス館へは、ディオクレティアヌス浴場で購入したチケットで入場できます。
(1)「自決するガラティア人」像
前3世紀にペルガモンを都とするアッタロス朝のアッタロス1世がガラティア人との戦争に勝利した記念の像(のローマ時代のコピー)とされています。ガラティア人は、バルカン半島を南下してきたケルト系集団で、小アジアに定住をはかり、ギリシャ人ら先住民としばしば対立しました。左の像はギリシャ人に破れ自決を計るガラティア人戦士、右の像は戦場に同行し戦士と運命をともにしたガラティア人女性。ちなみに、ローマにはもう一つ「死にかけたガラティア人」という像があり、Aのカピトリーノ美術館に展示されています。
(つづく)
【連載】聖年のローマを歩く
聖年のローマを歩く① 国立博物館~トレビの泉
聖年のローマを歩く②聖マリア~聖ジョバンニ