慰安婦日韓合意 イタリアの反応

12月28日、驚きのニュースが飛び込んできました。

日韓両政府は28日の外相会談で、旧日本軍の従軍慰安婦問題の決着で合意した。岸田文雄外相と韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相は会談後の共同記者発表で「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と表明。韓国政府が元慰安婦を支援するために設立する財団に日本政府が10億円を拠出し、両国が協力していくことを確認した。
出典:岸田外相、慰安婦問題「終止符打った」 日韓合意(2015年12月28日 日本経済新聞)

合意のポイントはこちら→ 合意のポイント(日本経済新聞)

イタリアではこの日韓合意についてどのように報道されたのでしょうか。代表的な日刊紙コリエレ・デッラ・セーラ紙の記事を紹介します。

コリエレ・デッラ・セーラ紙電子版(2015年12月28日)

コリエレ・デッラ・セーラ紙は日本でいえば読売新聞的なポジションです。

Il governo giapponese ha chiesto formalmente scusa alla Corea del Sud per quella che era rimasta la questione irrisolta più spinosa nei rapporti fra i due paesi, quella delle «comfort women», le donne sudcoreane ma non solo che durante la seconda guerra mondiale vennero impiegate come schiave del sesso per i militari nipponici.

日本政府は韓国に対し、両国間のもっともやっかいな未解決問題であった「慰安婦」、つまり、第二次世界大戦中に日本軍のために性奴隷として使われた南朝鮮の女性たちの問題について正式に謝罪した。
«Schiave del sesso», il Giappone chiede scusa a Seoul 70 anni dopo

ちなみにこの記事に使われている写真(本記事冒頭のもの)は、1944年に中国とビルマとの国境付近で行われた拉孟・騰越の戦いで日本軍が玉砕した際に投降した朝鮮人慰安婦(5人)の姿だそうです。同地に慰安婦は20人おり、残りの日本人慰安婦15人は自決したとのこと。コリエレ記事のキャプションには「朝鮮人「慰安婦」と日本人兵士」とありますが、実際は日系の米兵ということになります。

 Le «comfort women» provenivano (…) dai Paesi sotto il controllo militare nipponico, che durante la Seconda Guerra Mondiale erano state rapite, prelevate delle loro case, o ingannate con la promessa di lavori in fabbrica, e poi condotte nei cosiddetti «comfort center» dove venivano picchiate e usate come schiave del sesso per i soldati giapponesi.

「慰安婦」は日本軍が支配した国々の出身であり、第二次世界大戦中、誘拐され、自宅から連れ出され、または、工場での仕事だと欺されて、いわゆる「慰安所」、つまり、日本軍兵士のための性奴隷として殴打され、使用される場所まで連れてこられた。

「~という説もある」ではなく、事実として書かれています。

Nel 1965 il governo giapponese aveva pagato 364 milioni di dollari a quello coreano per tutti i crimini di guerra, inclusa la vicenda delle «comfort women», e nel 1994 era stato creato sempre dal governo nipponico un Fondo Donne Asiatiche, chiuso però nel 2007. Una questione sempre rimasta aperta, per lungo tempo le autorità giapponesi si erano rifiutate di riconoscere a pieno gli abusi compiuti dai soldati nipponici durante la Seconda guerra mondiale.

1965年、日本政府は、「慰安婦」を含む全ての戦争犯罪について、韓国政府に3億6千4百万ドルを支払った。1994年には、日本政府によりアジア女性基金が設けられたが、2007年に廃止された。未解決問題でありつづけ、日本政府は長い間第二次世界大戦中に日本軍兵士により行われた乱行について完全に認めることを拒否していた。

他社の報道もほぼ同様です。尊厳を傷つけられた慰安婦の実数については争いがある(ラ・レプッブリカ紙電子版)との言及もあるものの、慰安婦イコール性奴隷はほぼ事実として書かれています。

電子ジャーナルのイル・ポストは、12月17日の産経新聞の加藤前ソウル支局長の無罪判決、および、23日の日韓請求権協定の違憲性の確認を求めた訴えを却下した韓国憲法裁判所の判断と、今回の日本政府の決断との関連性を指摘しています。

「タカ派として知られている安倍首相が公式に謝罪してお金も拠出するというのだから、やはり日本軍は相当やましいことをしたのであり、今回日本もそれをようやく完全に認めた」というのが認識の基本線のようです。

読者の反応

上のコリエレ紙の記事に読者が残したコメントをいくつかピックアップします。

「日本は何千という少女を含む女性に犯した非道な行いを記念する像を撤去しろといっている。十分に反省していない」
「南京で何をやったか。日本人の行くところ、破壊と殺戮があった。日本の残虐行為のシステマチックなやり方にはドイツ人も及ばない」
「残念ながら世界大戦中には似たような非道な行いはどこの軍隊にもあった」
「南京では少なくとも百万人が殺された」
「これは多くの人が文明と伝統の生まれた国と考えている日本の歴史の汚らわしいページのひとつだ」
「ドイツとイタリアは誤りを認めてナチとファシストから距離を置いているのに、日本は戦争犯罪人の天皇を崇め続けた。原爆投下は戦争を続けた天皇の責任」
「日本を戦争に駆り立てたのは1941年7月に石油や鉄の禁輸を行ったアメリカだよ」
「日本が朝鮮でやった恥ずべき行為は性奴隷の件だけではない。朝鮮語の禁止までやった」
「イタリアは何も認めてない。80年代まで映画「砂漠のライオン」の上映が禁止されていた。理由はイタリア陸軍のイメージを損ねるから」
「日本は死刑執行が多い国のひとつでもある」
「みんなもっと本を読むべき。朝鮮人慰安婦の大半は何をするかわかっているプロの女性たちだった」
「小説を読むより元慰安婦や元軍人の証言を聞くべき」
「日本はここ数年にもう何度も謝ったよ」
「韓国が1960-70年にアメリカ人向けのハウスを運営していたのを知っているか。韓国はお金が欲しいだけ。今回お金を払ってもまた将来ほしがるだろう」
「日本人は南京で中国人の市民と捕虜を10万から30万人殺した」
「南京の数字には皆が同意しているわけではない」

コメントは100件を越えており、数人が厳しい内容の書き込みを繰り返しています。意外にも日本人がいつもやっているような議論とほとんど変わらない印象です。

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