イタリア 新内閣成立までのプロセス まとめ

6月、イタリアでコンテ新政権が成立しました。総選挙から組閣まで2ヶ月以上を要する難産でした。この機会にイタリアにおける新内閣成立までのプロセスを日本の場合と並記してまとめます。

3月の総選挙の結果はこちらにまとめてあります。

新内閣成立までの流れ

国会が早期解散した場合の選挙から新内閣成立までのプロセスは以下のようです。

日本の場合

衆議院選挙後に初めて国会の召集があったとき、内閣は総辞職します(憲70)。ただし、次の内閣総理大臣が任命されるまではその職務を継続します(職務執行内閣、憲71)。次の内閣総理大臣は、国会議員の中から、国会の議決で指名されます(総理大臣指名選挙、憲67)。つまり、首相になるためには「国会議員」である必要があります。

天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命します(憲6)。そして、内閣総理大臣は国務大臣を任命します。国務大臣の過半数は国会議員から選ばれなければなりません(憲68)。国務大臣が天皇の認証を受けると内閣が正式に発足します。発足後に改めて国会の承認を受ける必要はありません。

参照先: 日本国憲法(e-gov)
参考映像: 総理大臣任命(NHK for School)

イタリアの場合

議会の任期が残っていても、大統領は上下両院またはその一方を解散することができます(scioglimento anticipato, 憲88①)。今回は数ヶ月の任期を残しての前倒し解散でした(2017年12月28日大統領令第208号)。過去の総選挙の多くが2~4月に実施されているので、どうやら年末の予算成立⇒春の総選挙という流れがスケジュール的に都合がよいようです。

選挙後に新しく議会が招集され、上下両院議長が無事選出されたタイミングで内閣は総辞職します(憲法に明文の規定なし)(1)。議員は議会初日から数日のうちに自己が今後所属する会派を届け出、各会派は会長を選びます。この作業により新しい院内勢力図(最新のものはこちら)が明確になります。

以上を前提に、大統領の「諮問(consultazioni)」が行われます。大統領は上下院議長、各党党首、大統領経験者などの意見を聴いた上で首相にふさわしい人物を選び、組閣を任せます(incarico)(2)。

今回は三勢力が鼎立したため、この「諮問」が繰り返し行われ、諮問を通じて大統領は党首たちに議会多数派の形成を促しました。結果的に五つ星運動と同盟の二党が歩み寄り、二党連立政権が発足する運びとなりました。そして、五つ星運動が推挙したジュゼッペ・コンテ氏(非国会議員、大学教授)に組閣が任されました。

閣僚の陣容が固まると、大統領は総理大臣を任命し、さらに、総理大臣の提案に基づき、国務大臣を任命します(憲92②)。大臣は大統領の面前で宣誓をします(憲93)。そして、宣誓後の就任式で、象徴的な行為として、閣議に使うベルの引き継ぎを行います。イタリアの場合、さらに議会の信任(fiducia)を必要とします(憲94③)。信任案の可決により上下両院の信任を受けると、いよいよ新政権がスタートします。信任が得られなかった場合、内閣は辞職し、大統領は諮問を再開します(3)。

今回のコンテ新内閣は、議会多数派の支持を受けているのですんなりと議会の信任を得ました。(了)


首班交代時の「ベルの儀式」を行うジェンティローニ前首相(左)とコンテ新首相(右)
出典:giornalettismo.com

(1)Colle, Gentiloni si è dimesso da presidente del Consiglio:…(R.it)
(2)Dal governo di scopo a quello del presidente, tutte le formule(ANSA.it)
(3)La fiducia (itcgfermi.it)
イタリア憲法参照先: governo.it, 新解説世界憲法集 第3版

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